和了欲求度と和了欲求点
手作りには様々な考え方がある。まずは配牌を見て、どういう指向をするかという点で分類してみる。
(1)役指向型 … この配牌なら全帯幺だ三色同順だと役を決める。
(2)棒聴指向型 … 役を考えず最短の和了を考える。
配牌を見て、(1)のように役を固定的に決めつけるのもよくないし、(2)のように役のことを全く考えないのもよくない。
今、わざと「配牌時」から論じたが、配牌の前に考えておかなければならないことがある。それは和了欲求度と和了欲求点である。
和了欲求度とは、今、この局で自分はどの程度和了したいと思うか、である。ダントツトップでオーラスならば、和了欲求度は極めて低い。また、ビリでオーラスならば、和了欲求度は極めて高い。一般に負けていれば和了欲求度は高く、勝っていれば和了欲求度は低い。また、一般に子よりも親の方が和了欲求度は高い。
和了欲求点とは、今、この局で自分は何点の和了をしたいのか、である。オーラスであれば和了欲求点は明確に定まる。オーラスでダントツトップならば、和了欲求点は最低点である。オーラスでトップとの差が3000点ならば、和了欲求点は3000点または3100点(トップと自家とどちらが上かによって異なる)である。では
点差がない局ではどうなのか、である。判りやすく東1局0本場に西家は何点の和了欲求点を持つべきか、である。これは人によって様々な見解があって然るべきだと思うが、大切なことは和了欲求点を自分の心の中に持つことである。ある人は8000点であろうし、ある人は1000点であろうし、ある人は3900点であろう。私はだいぶ長い間、5200点に設定していたのだが、最近かなり下がってきており2000点になっている。しかし3900点に再設定しようとしている。私の考えは、2000点は和了可能性は高いが、和了点が低いので最終順位に与える影響が少なすぎる。5200点はおいしい和了ではあるのだが和了可能性が下がるので、間を取ると3900点になる、という感じである。
では東2局にトップとの差が8000点あったとしたら、どう考えるか。これも人によって様々であろうが、私はこう考える。東風戦においては悠長には構えていられない。しかし8000点を一気に逆転するのは辛い。半分の3900点、あわよくば5200点を狙おう。間違っても1000点では勝ちを譲ることになるのでやめよう。
和了欲求点はすべてその局が始まる時点での、点差と親か子かなどの場況によって決まるのである。いや決めなければならないのである。その荘の前や前の前の局に誰がどういう和了をしたとか、誰がノー聴であったとかということとは全く無関係である。
和了欲求度と和了欲求点を胸に秘めて、配牌を見る。ここで大切なことは、和了欲求度と和了欲求点と配牌とを比べて再構成することである。和了欲求点が1000点の場合には、
棒聴指向で打てばよい。満貫が必要な場合には役指向が必要であろう。役指向型か、棒聴指向型かは、和了期待点によって切り替えなければならない。
役指向については後に役別に詳述するが、配牌を見て決めつけすぎるのもよくない。どうしても満貫欲しいから三色同順はつけなくては、と配牌時に思うと何が何でも三色同順を作ろうとしてしまって失敗するケースは多い。三色同順を念頭に置きながらも、1回1回の自摸で他の役では何で代替できるだろうかと柔軟に考え直しながら打つことが大切である。
面子手の向聴数のパターン
面子手の向聴数には決まったパターンがある。
面子手以外には、七対子と国士無双があるが、これらの役の向聴数はここでは除外する。(実は七対子の向聴数は意外に難しいものなのであるが、このことについては別記する)
●面子手の一向聴のパターン
面子手の一向聴のパターンは、面子数・対子数・搭子数の最少数でパターン化すると、以下の5種類ある。
| 面子 | 対子 | 搭子 | 浮き牌 | |
(1) | 2 | 1 | 2 | 1 |
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(2) | 2 | 2 | 1 | 1 |
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(3) | 2 | 3 | 0 | 1 |
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(4) | 3 | 1 | 0 | 2 |
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(5) | 3 | 0 | 1 | 2 |
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これは、最少の面子数・対子数・搭子数で分類したものであり、浮き牌(伏せ牌になっている牌)が対子や搭子に絡んでいることが多い。
(1)のパターンの一向聴になることが最も多い。この時に浮き牌の1枚は、安牌として使えるし、また牌効率を高めるために対子や搭子に絡めることもできるし、暗刻や暗順にくっつけたり、別の役狙いのための遊軍目的の浮き牌としても使える、というように自由度が高い。
最も聴牌が早いとされるのは、「ポンよしチーよしポンチーよし」と言う沼崎定石のパターンで、上記(1)の浮き牌が搭子に絡んで3枚で搭子と対子を構成している形である。
「ポンよしチーよしポンチーよし」
この牌姿から鳴いても役はないが、聴牌はできる。
(4)が俗に言う「くっつき聴牌」の形である。浮き牌の2牌のどちらかがどちらかにくっついて搭子または対子を構成するか、または、対子の九筒が暗刻になって単騎待ちになれば聴牌というパターンである。
くっつき聴牌の時に、浮き牌の2枚が中寄りの牌であれば、聴牌までの受け入れは最も広いことになる。
全くの余談であるが、「黄金の一向聴」と言うものがある。これは三色同順と一気通貫の両天秤の一向聴形のことである。
二索を引けば三索を打って三色同順、一萬か五萬を引けば四索を打って一気通貫の聴牌である。
●面子手の二向聴のパターン
面子手の二向聴のパターンは、面子数・対子数・搭子数の最少数でパターン化すると、以下の8種類ある。
| 面子 | 対子 | 搭子 | 浮き牌 | |
(1) | 1 | 1 | 3 | 2 |
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(2) | 1 | 2 | 2 | 2 |
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(3) | 1 | 3 | 1 | 2 |
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(4) | 1 | 4 | 0 | 2 |
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(5) | 2 | 0 | 2 | 3 |
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(6) | 2 | 1 | 1 | 3 |
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(7) | 2 | 2 | 0 | 3 |
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(8) | 3 | 0 | 0 | 4 |
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色バランスと絶一門
麻雀における打ち方の考え方の1系統として、色バランスと絶一門という相反する概念がある。
浮き牌の整理順、搭子の整理順に、大きな影響を与えるものである。
色バランスとは、3種類の数牌、萬子・筒子・索子をバランスよく使おうとする考え方である。ある色の真ん中の牌がポツンと浮いていた場合に、それを切るよりも、色バランスを考えてそれを保持し、他の色の辺搭などを整理する打ち方である。無駄自摸をなるべく少なくし、広く受けようという考えから来ている。
色バランスを考えた打ち方をすると、三色同順を生みやすい。現在の牌姿から三色同順が遠くても、色バランスを考えて打つと自然と後から入れ替えなどによって三色同順が生まれてくるものである。
絶一門とは、3種類の数牌、萬子・筒子・索子のうちの一色を完全に断ってしまう打ち方のことである。序盤に数牌の数の少ないまたは愚形の色は整理してしまう。その色に関しては以降の自摸は無駄自摸になるが、他の二色に関しては受け入れが広い。これは、牌連続性を意識してのものである。絶一門をやれば、三色同順は絶対にできないことになるが、多面待ちを生みやすい。
東2局0本場 北家4巡目 持ち点:23000点 トップ差:7000点
自摸: ドラ:
このような手牌において、色バランス派の人は五索を切ることは選択肢に入っていない。また、逆に絶一門派の人は五索以外を切ることは考えていない。
色バランス派の意見:「三色同順が見える」「断幺九を確定したい」「筒子は受けが悪い」
絶一門派の意見:「三色同順よりも萬子か筒子の一気通貫」「萬子の多面待ちのみならず筒子の多面待ちが期待できる」
東2局0本場 北家4巡目 持ち点:23000点 トップ差:7000点 と場況がしっかりしていれば、この場況と、牌姿から和了期待点を最大にするような打牌を計算することができる。
このような例での計算は後の章に譲るとして、ここで言いたいことは、色バランスか絶一門かを決めつけてしまっていてはいけない、ということである。全ての起こりうるパターンを洗い出して、そのパターンごとに最も起こりやすい確率計算をした上で判断することが大切である。
手作りの実践
2−02 浮き牌理論
浮いている牌をどういう基準で切るかを論じる。
2−03 搭子理論
搭子のうちどれを崩すか、面子と複合している搭子をどう処理するかを論じる。
2−04 牌効率理論
具体例を掲げて、最良の牌効率のための比較論を展開する。
2−05 役の作り方
役別にどのように役を作っていくかを論じる。
2−06 立直判断基準
立直をかけるか黙聴とするかの判断基準について論じる。
2−07 副露判断基準
副露をするか否かの判断基準について論じる。
2−08 和了判断基準
和了牌が他家から出た、または、自摸ってしまった時に、どうするかについて論じる。
2−09 和了期待点
和了期待点の計算方法について詳述する。