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 2−02 浮き牌理論
 浮き牌と言ってもその捉え方は多種多様。浮き牌をどのように捉えて、どういう順序で切るか、について述べる。

    浮き牌の概念

  • 浮き牌の定義
     浮き牌とは搭子を構成しない牌のことである。
     字牌ならば1枚、数牌ならば上下±2以内の同色牌がない状態である。つまり、同色の他の牌との差が3つ以上のものである。9索を中心に考えると、手の中に別に9索(差がゼロ)があれば対子なので、浮き牌ではない。手の中に8索(差が1)があれば辺搭なので浮き牌ではない。手の中に7索(差が2)があれば嵌搭なので浮き牌ではない。手の中に6索(差が3)があっても、これは搭子にな らないので、9索は浮き牌ということになる。
     
  • 牌単体エネルギー
     牌単体エネルギーとは、単独の牌が持つエネルギーのことである。エネルギーとはどういうことかというと、面子構成寄与率である。どれだけ面子構成する率が高いか、ということである。雀頭においては2枚だからどの牌も同じ、という訳ではない。延べ単などがあるので、字牌より数牌の方が雀頭として成立しやすい。順子や刻子においても、字牌より数牌の方が面子構成しやすい。これは役牌の副露も考慮した上での統計分析結果である。また、数牌の中では中寄りの牌の方が牌単体エネルギーが高い。
     牌単体のエネルギーは、
          456 > 37 > 28 > 19 > 字牌
    となっている。
     非常に単純には牌単体エネルギーの弱い方、字牌から切っていく方がよい。そして次に老頭牌(1と9)、という順序である。
     牌単体で考えるとこうなるが、浮き牌の有効性は、同色の他の面子・搭子・対子との関係、目指すべき役によって決まることもある。これを浮き牌差理論と言う。後述する。

     厳密には、牌単体エネルギーは、4と6よりも5が若干低い。これは、統計分析における牌分析の結果、明らかとなった。詳細は、「2−10統計分析」を参照方。
     
  • 浮き牌切り
     序盤(1〜6巡目)、中盤(7〜12巡目)、終盤(13〜18巡目)の3段階に分けて考える。 序盤に浮き牌を整理する、と思っている人が多いのであろうが、実は違う。終盤にこそ浮き牌が最も不要であり、次に中盤、浮き牌を多く取って置いて打つ(浮かせ打ち)が必要なのは、序盤なのである。

     浮き牌としては、幺九牌(字牌と老頭牌)が多いが、それらをどういう基準で切り出すかについて考察する。
     また、序盤に浮き牌を切ることにデメリットもあるので、それについて論じることとする。

     
  • 安牌持ち
     一般に安牌は浮き牌であることが多い。面子候補の搭子としての安牌もありうる(暗刻使いの壁の外側など)が、一般に安牌は字牌、それも客風牌であることが多い。
     役牌(荘風牌・門風牌・三元牌)の持ち方については、役牌絞りとの関係が深いため、ここでは記述しない。第3章に記述する。

    浮き牌の切り順

  • 字牌の切り順
     字牌は風牌4種類と三元牌3種類の計7種類ある。
     まずは風牌から。
     まず基本的な定石から、東1局東家(親)が配牌で東南西北の4種類を1枚ずつ持っていたとして、第一打牌として4つから1つを選択するとしたら、どれを切るか?
     よほどの初心者かよほどの変則打ちでない限り、ダブ東候補の東は切らないであろう。では、東家にとって、南・西・北は、同じウエイトなのであろうか?
     答えは北である。北→西→南→東の順に切るのがセオリーである。なぜなら、北を切った時に北家がポンをしたら、すぐ自分に自摸が回ってくるからである。
     風牌の利用度(牌単体エネルギー)を見ると、東→南→北→西の順である。
     では東1局西家が東南西北の4種類を1枚ずつ持っていたとして、第一打牌として4つから1つを選択するとしたら、どれを切るか?
     答えは、南→北→東→西の順である。役牌としての利用度は場風よりも門風の方が高いので、西を最後に残す。
  • 三元牌の切り順
     三元牌はどれでも同じと思っている人が多いが、実は利用度に違いがある。白發中のうち、利用度の高い順に並べると、白→中→發である。白と中の差は誤差範囲であるが、發は、白と中に比べて利用度が低い。これは牌の視認性の問題であると思う。ざっと多くの捨て牌を眺めた時に、白と中は視認性がよい。比較して發は視認性に劣るのである。
     ゆえに、切り出し順としては、白→中→發がよい。これは他家の利用度が低い分だけ、自分の利用度を高めることになるからである。

  • 老頭牌と字牌の切り順
     必ず1つ覚えのように、客風牌(オタカゼ)→老頭牌→役牌の順に切る人が多いように感じる。
     大原則としては、客風牌(オタカゼ)→役牌→老頭牌の順に切る方がよい。理由は、牌単体エネルギーである。客風牌が最も牌単体エネルギーが弱い。そして次に役牌である。役牌は対子になればポンして1飜を見込め、早く和がれると思いがちであるが、副露も含めて最終和了形に役牌が含まれる確率と老頭牌が含まれる確率を分析した結果、老頭牌の方が遙かに高いので、老頭牌の方が利用価値が高いのである。9索1牌、發を1牌持っていて、どちらかを切る場合、「發が重なれば鳴いて1飜」と「7索または8索を引いて搭子、もしくは、9索を引いて対子」のどちらが牌効率が良いかと言えば、後者である。
     もう1つ、役牌が大切にされる理由として、役牌絞りがある。特に序盤において他家に役牌を鳴かせることを防ぐためである。このことについては第3章に記述する。

     
  • 客風牌(オタカゼ)と役牌の切り順
     客風牌(オタカゼ)→老頭牌→役牌という大原則に従わない事例も当然ある。特定の役が絡んだ場合で、混一色、全帯幺、対々和、大三元などが見込める場合である。
     これらは、字牌、特に役牌が有効に作用する場合の例であるが、この逆もあることをよく認識しておきたい。いかなる場合においても、客風牌(オタカゼ)の単独牌を最初に切るべきではないのである。

       東1局0本場南家 2巡目 +0 ドラ:9索
        自摸:
     浮き牌は3つ、7萬・西・發であったところに、8萬を引いた。これで、両搭となり、2面子+3両搭+2浮き牌となっている。
     このような牌姿で、何も考えず、客風牌(オタカゼ)だからと西を切っている人が多い。
     西を残して發を切るべきである。その理由は、平和という役にある。数牌がすべてかぶらず、面子と両搭以外のかぶりがない。つまり、雀頭がない一向聴である。西か發を残した方が雀頭になる可能性が高い。そして、西が雀頭になれば、平和になるが、發が雀頭になっても、平和にならない。この牌姿から發を対子にしても、その後に發をポンして和がりを目指すべきではない。両搭3つのどれかを崩していくよりも、面子化を待つ方がよい。
     高い可能性で平和が見込める場合には、役牌よりも客風牌(オタカゼ)を大切にすべきである。
     
  • 序盤の広げ打ち
     浅く広げるのか、深く狭めるのかは、手作りの重要な判断である。
     1枚浮いている7萬を手出しで切った後、8萬を自摸切り、9萬を自摸切りして、「自摸が悪い」というのは我が儘すぎである。
     浅く広げる、ということの意味は、浅く広がるのではなく、広げる、つまり意図的に広くすることを意味し、向聴数を増してでも、広く構えることである。
     一般には、序盤では浅く広げて打つことが推奨される。
       東1局0本場南家 4巡目 +0 ドラ:西
        自摸: (4巡目)
     何を切るか?
     7萬が浮いているので7萬を選択する人が多いと思う。手を広げるためには7萬は切らずに少なくとも6巡目までは温存すべきである。 3萬を切ってしまうのも、3萬と7萬の差が4つで二嵌の渡りとなるために、切りづらい。
     では浮き牌を切らずに何を切ればいいのか? 答えは簡単で対子である。6筒を切るべきである。
     序盤には、対子を切れ、である。
  • 牌連続性と浮き牌
     複数の浮き牌から選択をしなければならない場合もある。その場合には、浮き牌といえど、牌連続性を考慮する。
       東1局0本場南家 6巡目 +0 ドラ:西
        自摸: ( 6巡目)
     6巡目に5索を引いた。何を切るか?
     7萬か3筒か8索である。このような場合には、単独浮き牌として孤立している7萬よりも、56筒の両搭と近い3筒や、456索の暗順と近い8索を温存した方がよい。
     その理由は多面待ちになる可能性を残しているから、である。もし4筒を引くと、3456筒になり、延べ単ながらも両面待ちになる。また、7索を引くと最大5面待ちが見込める。
     これを「牌連続性を見込んだ浮き牌持ち」と言う。
     単独孤立している7萬を打つべきである。
     
  • 浮かせ打ち
     手中の他の牌と搭子を構成しない中張牌の単独牌(浮き牌)を捨てずに持っていること、そういう打ち方のことを「浮かせ打ち」という。独立した対子の中張牌を1枚外し、1枚残して打つ場合も同様に「浮かせ打ち」という。
     なぜ孤立牌を浮かせたまま打つのかと言えば、手を浅く広げるためである。また、搭子や面子を固定化しないためである。浮かせ打ちは、打ち方の中では高度な部類に入る。
     安牌持ちと浮かせ打ちは別のことである。浮かせ打ちは浮かせた牌を搭子候補として利用するのであり、防御には適さない。 一般に安牌は字牌(2〜3枚切れの役牌や客風牌)、老頭牌や壁外の牌の牌であることが多いが、浮かせ打ちする孤立牌は、中寄りの数牌、要頂牌であることが多い。
  • 面子確定性と浮かせ打ち
     
     このような場合、456索を固定順子と見ると、8索は浮き牌になる。しかしおよそいかなる場合においても、「この面子(特に順子)は、これで確定」と考えるべきではない。面子は変動するもの、柔軟に動くものである、という認識を持つことが大切である。
     この例の場合、45索の両搭と、68索の嵌搭という、2つの搭子の組合せと捉えることが必要であるということである。このことが牌連続性の考え方の根本になる。
     7索を引けば、基本3面待ちになるし、3索を引いても、嵌7索待ちになるのである。
     
  • 暗刻くっつき
     およそいかなる場合においても、「この面子(特に順子)は、これで確定」と考えるべきではない、と書いたが、暗刻の場合もしかりである。暗刻は、隣りにくっつけば、順子+雀頭になる可能性が出てくる。444の暗刻に5がくっついた4445ならば、3・5・6の三面待ちになる。一般に中張牌の暗刻がある場合には、他に対子を持たないように打つ方が牌効率がよい。
     
  • 辺搭よりも3〜7の浮き牌
       東1局0本場南家 4巡目 +0 ドラ:西
        自摸: (4巡目)
     何を切るか?
     この牌姿は、中の暗刻、234筒の暗順、56萬の両搭、12萬の辺搭、89索の辺搭、7筒の浮き牌、3索の浮き牌、という構成になっている。
     浮き牌となる7筒や3索を切ってしまうのは、実は牌効率が悪い打ち方である。
     辺搭よりも3〜7の浮き牌を大事にする。
     見えている牌を参考に、12萬か、89索か、どちらかの辺搭を落とす方が和了確率は高い。
     
  • 浮き牌差理論
     69索から9索を切る場合と、59索から9索を切る場合を考える。どちらも9索を切るということにおいては、9索の牌単体エネルギーは同じであるため、変わらないことになるのであるが、69索からの9索切りの方が優れている。ここで優れているとか価値があるとかいい選択であると言っていることの意味は、59萬69筒を持っている時に、9萬を切る方がいいのか9筒を切る方がいいのか、という判断基準のことである。
     69索からの9索切りの方が優れている理由は、
       @筋牌を持つのは得策でないため。
       A「二嵌の渡りを残す」ため。

     筋牌を持つのは恐ろしいことである。防御面を考えると、遠い筋でも同様である。遠い筋とは3索と9索のように、369索の隣り合わせではない筋牌のこと(3と6、6と9をそれぞれ隣の筋と言う)である。
     69索からの9索切りは8索自摸でも68の嵌搭となりダメージがない。それに比べて、59索からの9索切りは8索自摸が無駄自摸になってしまうダメージが大きい。
     元々、二嵌の渡りを残すとは、59から7を自摸って、579の二嵌形にすることを意味している。特に7がドラの場合に多く用いられる格言である。
     しかし、二嵌の渡りを残すとは、59のように差が4つある(間3軒)の場合に、それを捨てずに残すという意味でもある。別に7がドラのように大切な牌であろうとなかろうと、59の4つ差を残しておけば、6、7、8のどれを自摸っても、搭子を構成することができるのである。また二嵌の有効性を充分に認識していれば7がドラではなくとも、579の二嵌を作るために9を残すのである。
     では更に進んで、59索から9索を切る場合と、49索から9索を切る場合と、39索から9索を切る場合……の比較はどうであろうか。差が広ければ広いほど牌間の関係性、結合エネルギーが薄いものとなり、それだけ相互に与え合う影響は弱くなる。
     ゆえに、基準としては、4つ差までは関係性を重視し、5つ差以上の場合には個別の牌単体エネルギーの方を重視すべきである。
       (1) 69索(差=3)からの9索切り
       (2) 58索(差=3)からの8索切り
       (3) 59索(差=4)からの9索切り
       (4) 47索(差=3)からの7索切り
       (5) 48索(差=4)からの8索切り
       (6) 37索(差=4)からの7索切り

       東1局0本場南家 5巡目 +0 ドラ:西
        自摸: ( 5巡目)
     何を切るか?
     捨て牌候補としては、9筒、1索、9索があがるであろう。
     答えは、差が3つである1索である。後の牌効率を考えても、1索切りがベストの選択である。次善策が9索(差が5つ)である。最後が9筒(差が4つ)である。
  • 差+構成
     浮き牌と他の牌の差がいくつある時に切りやすいか切りにくいかという理論だけでは実は実戦にはあまり役に立たない。実際、浮き牌と他の牌のうち、他の牌の方は面子や搭子を構成しているケースが多い。もちろんそちらも浮き牌である場合はある。
     他の牌の方が構成している面子や搭子によって、どの程度切りやすいのかの比較論を展開する。
      差が3つの場合
        669索 (対子)
        569索 (両搭)
        469索 (嵌搭)
        6669索(暗刻)
        4569索(暗順)
        69索  (浮き牌)
      差が4つの場合
        559索 (対子)
        459索 (両搭)
        359索 (嵌搭)
        5559索(暗刻)
        3459索(暗順)
        59索  (浮き牌)
      分類すると、このようにパターン分けすることができる。
     そして、これらのうち、9索を切りやすい順(早く切らなければならない順)に並べると、
      差が3つの場合
        (1) 6669索(暗刻) …暗刻筋が危険なため一刻も早く切る。
        (2) 669索 (対子) …筋で3牌でも充分危険。
        (3) 4569索(暗順) …面子完成なので切りやすい。
        (4) 569索 (両搭) …嵌搭ほどではないが不確定要素が少し残る。
        (5) 69索  (浮き牌)…6を切る可能性もほんの僅かのこる。
        (6) 469索 (嵌搭) …嵌搭が不安定なので9索を切りづらい。

     同様に切りやすい順に並べるが、差が4つの場合には、どの場合にも7索自摸のリスクを負うことになる。8索自摸はどうしようもなく無駄自摸になる。9索切り後の7索自摸のデメリットの小さい順ということになる。
      差が4つの場合
        359索 (嵌搭) …7索自摸で357の二嵌となる。
        559索 (対子) …7索自摸で557になる。
        459索 (両搭) …7索自摸で457になる。
        5559索(暗刻) …7索自摸で5557(対子+嵌搭)になる。
        3459索(暗順) …7索自摸で3457(両搭+嵌搭)になる。
        59索  (浮き牌)…二嵌の渡りを残したいために最も切りづらい。
     
  • 見えている牌からの浮き牌の選択
     序盤、他家の捨て牌や副露牌が見えてくることにより、何を浮き牌として持つべきかの取捨選択を行う。
     タコはよく序盤で中張牌のポンをしてしまう。これは浮き牌選択において、最も大きなチャンスとなる。
     面子は暗順ならば一間ずらしなどでわずかに変えられるだけ、暗刻は暗刻くっつきによる変化、搭子は搭子変化、などがあるが、どれにしても浮き牌ほどの自由度はない。自由に将来の面子構成を変えられるのは、浮き牌なのである。
     見えてくる牌から、浮き牌を切り替えていく打ち方が必要である。
     
  • 中張牌の浮き牌

  • ドラおよびドラ周辺の浮き牌

     
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