ひいいの麻雀研究
2−03 搭子理論
搭子の種類、両搭や嵌搭の分類、二嵌形、それらを含めた価値比較論など。
搭子の概念
用語の定義
辺張(ペンチャン)という言葉と辺搭(ペンタア)という言葉がある。この2つは同じことを表しているようであるが、意味が異なる。
辺張の張(チャン)とは、日本の麻雀用語で「張る」という言葉の意味通り「待つ」という動詞の意味を持つ。
これに対して辺搭とは、辺搭子(ペンターツ)、もしくは、辺張搭子(ペンチャンターツ)の略であり、搭子そのものの形態を静的に表現する言葉である。
日本語ではよく、「辺張待ち」と表現するが、この表現の仕方はおかしく、「辺張」というだけで、「3か7の待ち」のことなのである。
搭子の形を表現する上において、ここでは、辺搭、嵌搭、両搭という言葉を使う。各種記述の用語の使い分けにおいてこの方が適切な表現である。始めは判りづらいかもしれないが、是非、慣れて頂きたい。
搭子の定義
搭子[たあつ]とは、連続した、あるいは、1つ飛びの同色数牌の2枚の牌の組合せのことである。
搭子(たあつ)には辺搭・嵌搭・両搭の3種類がある。
対子(といつ)は、搭子ではない。
辺搭(ぺんたあ)
12、89持ちで辺張待ちになる搭子
待ちは1種4枚
嵌搭(かんたあ)
13、46持ちなどで嵌張待ちになる搭子
待ちは1種4枚
両搭(りゃんたあ)
23、56持ちなどで両面待ちになる搭子
待ちは2種8枚
一般に、辺搭より嵌搭、嵌搭より両搭の方が搭子として好まれる。もし、辺搭と嵌搭のどちらかを切り落としていかなければならないとすると、嵌搭よりも辺搭が切り落とされる。
では辺搭は常に切り落とされる運命にあるのか、というと必ずしもそうではない。
搭子は進化する。これを搭子進化理論という。
搭子進化理論
12→124→24→245→45 というように、辺搭→嵌搭→両搭に、搭子は進化する。辺搭と嵌搭は同じ1種4枚待ちである。しかし辺搭よりも嵌搭の方が優れているとされるのは、嵌搭が両搭に進化しうるから、である。
定石:「両搭>嵌搭>辺搭」
辺搭からいきなり両搭には進化できず、辺搭は嵌搭を通して両搭に進化する。嵌搭よりも両搭の方が待ちが多いことは当然である。
これはあたかも幼虫がさなぎになって成虫になるという昆虫の変態を見ているかのようである。
辺搭の成長過程
12→1→(消滅) …2、1の順で捨てる。
12→2→(消滅) …1、2の順で捨てる。
12→112
12→122
12→123 … 順子完成。
12→124 … 辺搭から嵌搭への進化。
認識として大切なことは、「搭子進化させる手作りをする」ということである。辺搭は必ずしもずっと辺搭のままではないのである。
辺搭→面子
辺搭→嵌搭→面子
辺搭→嵌搭→両搭→面子
辺搭→嵌搭→嵌搭→両搭→面子
嵌搭→面子
嵌搭→両搭→面子
嵌搭→嵌搭→両搭→面子
嵌搭→両搭→嵌搭→面子
嵌搭→両搭→嵌搭→両搭→面子
というような進化形態がある。両搭から両搭に変化することはない。
<搭子状態遷移図>
搭子退化の場合
より良系の搭子(両搭>嵌搭>辺搭)に変化することを搭子進化と言う。また、これとは逆により悪系の搭子に変化することを搭子退化という。
実戦では、搭子を進化させるばかりではなく、退化させることも行う。これは特定の役を狙った手作りをする場合や、他家危険牌を抑えて回す場合などに行われる。
東1局0本場南家 10巡目 +0点 ドラ:東
自摸:
1索を自摸って来た。34索は両搭で25索待ちの両面であるが、役がない。自摸ってきた一索を入れて四索を切ることにより、搭子としては両搭から嵌搭に退化させ、待ち牌数も減らすのであるが、全帯幺(チャンタ)という役で2飜を確定させるのである。
待ち牌数は半減(約半分であるが統計上は半分までには減っていない)してしまうのだが、和了期待点が大きく上がるので、四索切りが常道である。
単純に和了期待点計算をしてみる。二索と五索による和了確率をともに同じPとする。また立直をかけることを想定する。
(1)34索持ちの25索待ちで立直の場合
二索でも五索でも和了点数は栄和で立直のみ50符1飜1600点、自摸和で40符2飜で2600点となる。全和了確率のうち、栄和は自摸和の2倍なので、栄和は2P/3、自摸和はP/3の和了確率となる。
1600×(2P÷3)+2600×(P÷3)=1933.33P
そして、二索と五索の両方の可能性があるので、これを2倍する。
1933.33P×2=3866.66P
(2)13索持ちの嵌2索待ちで立直の場合
二索のみの待ちで、栄和で立直+全帯幺50符3飜6400点、自摸和では満貫8000点となる。全和了確率のうち、栄和は自摸和の2倍なので、栄和は2P/3、自摸和はP/3の和了確率となる。
6400×(2P÷3)+8000×(P÷3)=6933.33P
(1)と(2)の確率を比較すると、両面待ちよりも嵌張待ちにした方が、和了期待点は1.79倍も高いことになる。
この計算は、非常に単純に、二索と五索による和了確率をともに同じPとして計算した。しかしより実戦向けにはもっと複雑な計算が必要となる。それについては後に詳述する。ここでは、搭子退化によるメリットもあるというだけに留めておく。
嵌搭から嵌搭への変化考察
24の嵌搭から5を自摸ってきたら、45の両搭に変えるのは当たり前の進化の方法である。では24から6を自摸ってきたら、どうするのがいいのであろうか。246は二嵌形であり、二嵌の有効性の話は別途するが、もし、2か6のどちらかを切らなければならないとしたら、どちらを切るか? 一般的に、24の嵌搭と46の嵌搭を比較した時には、46の嵌搭の方が価値が高いのである。なぜかというと、24の嵌搭は5を自摸れば45の両搭に進化するが1を自摸っても辺搭に退化しかしないのである。これに対して46の嵌搭は3自摸でも7自摸でも両搭に進化する。従って、24の嵌搭よりも46の嵌搭の方が価値が高いのである。
しかし、246から2を切り出した後の46の嵌搭は3を自摸ってきても振聴状態となるために、両搭への手変わりは片方向にしか価値を持たないこととなる。つまり46から3を持ってきたら振聴になるので嫌い、7を持ってきた時にのみ、67の両搭に進化できる。
では、246から6を切った場合にはどうかというと、もう両搭への成長をストップすることになるのである。24から5を自摸ってきても、振聴となるためにもう両搭には進化できない。しかし、246から6を切った時には大きなメリットが生まれる。それは筋引っかけである。二嵌形は大事にすることが前提であり、手が一向聴か聴牌になるまで温存するべきであり、もし246から何を切るかと問われれば、手が熟していれば(聴牌か一向聴であれば)、筋引っかけ狙いの6切りなのである。話は少し逸れるが、二嵌形からの6切りは実は遅ければ遅いほど引っかけの効果は薄れる。元気よく手出しで六萬を切って立直などと出た場合(立直牌が筋引っかけ牌、いわゆる直がけ)、捨て牌相から引っかけ三萬待ちを読まれてしまう場合は多い。
ここで述べた、「振聴となるために両搭には進化できない」は振聴を嫌った打ち方をする場合のことであり、振聴覚悟で両搭に進化させる方法もある。
搭子の捉え方
完成している面子を面子としてしか捉えないのはまずい。345は完成順子(暗順)でありつつも、34の両搭と孤立の5、45の両搭と孤立の3、35の嵌搭と孤立の4、の3種類として捉えることができる。
これは手作りの牌効率に非常に大きな影響を与える重要な事項である。後に詳述する。
搭子分析
搭子分析
搭子には、両搭・嵌搭・辺搭の3種類がある。搭子の利用価値として、両搭>嵌搭>辺搭 の不等式が成り立つのは周知の事実。手作りの基本的な公式である。
搭子には、別の見方として、12や23のように数牌が連続する「連続系搭子」と13のように1つ間が空いている「非連続系搭子」がある。
全15種類の搭子を掲げてみる。対子は除く。
連続系搭子(8個)
12
辺搭
23
両搭
34
両搭
45
両搭
56
両搭
67
両搭
78
両搭
89
辺搭
非連続系搭子(7個)
13
嵌搭
24
嵌搭
35
嵌搭
46
嵌搭
57
嵌搭
68
嵌搭
79
嵌搭
連続系搭子8個のうち、6個が両搭で、2個が辺搭である。非連続系搭子7個はすべて嵌搭である。
両搭(6個)や嵌搭(7個)は、その中にもそれぞれ種類があり、利用価値が異なることはあまり意識されない。この点について分析する。
つまり、「両搭なら、どれも同じ」「嵌搭なら、どれも同じ」ではないのである。
両搭には、23と78の端寄両搭(最も端に寄った両搭、辺張とは異なる)と、45と56の中央両搭と、この2つの間である34と67の中間両搭がある。
嵌搭には、13と79の端寄嵌搭と、24と68の準端寄嵌搭と、46の中央嵌搭と、35と57の準中央嵌搭がある。
辺搭を合わせると、8つの搭子種類があることになる。両搭3種類+嵌搭4種類+辺搭1種類で合計8種類である。これらの利用価値は、以下のように順位づけることができる。
両搭
(1)端寄両搭
23
78
進化不能
(2)中間両搭
34
67
進化不能
(3)中央両搭
45
56
進化不能
嵌搭
(4)準中央嵌搭
35
57
両側に両搭進化可能
(5)中央嵌搭
46
両側に両搭進化可能
(6)準端寄嵌搭
24
68
片側に両搭進化、逆側に辺搭退化可能
(7)端寄嵌搭
13
79
片側のみに両搭進化可能
辺搭
(8)辺搭
12
89
片側のみに嵌搭進化可能
一般に両搭は搭子としての進化がない(三色同順や一気通貫などの役を狙って両搭を嵌搭や辺搭に退化させるなどは別議論)。搭子進化理論で言えば両搭は最終系であり、これ以上変化しないのである。
両搭3種類の中では、他家に持たれる率が低く、和了可能性が高いという理由から、(1)端寄両搭が最も価値の高い搭子であると言える。そして次が(2)中間両搭で、(3)中央両搭と続く。中央両搭は、待ち牌が真ん中寄りとなるために和了可能性が低くなる。あるいは両搭の中では最も面子完成しづらい搭子である。
嵌搭4種類は、以下のような価値の順位となる。(4)準中央嵌搭が最も嵌搭としての価値が高い。これは、嵌搭は搭子としての成長途中であり、両側への両搭進化があり、さらに35から23への両搭進化と57から78への両搭進化においては、端寄り両搭という搭子最高形態になるために、価値が高いのである。(5)中央嵌搭は、準中央嵌搭と同様に両側に両搭として進化可能である。順番としては中央嵌搭の次になる。その理由は、46から34、46から67の両搭になった後の評価値として、中間両搭の価値が端寄両搭よりも低いからである。(6)準端寄嵌搭の場合、24から5が来て45になる場合にしか両搭への成長は望めない。24から1が来て12では辺搭に退化することになるからである。また45という中央両搭は両搭の中では最も価値が低い。(7)端寄嵌搭の場合は、準端寄嵌搭より変化が限られており、13から4が来た場合にのみ34の両搭に進化できる。辺搭への退化もできない。
最も価値が低いのは、言わずと知れた(8)辺搭である。片側のみに嵌搭にしか進化できない。
この利用価値の言わんとするところは、搭子選択をする時、つまり搭子が余っており、どれかの搭子を切り崩さなければならない時に、どれを切り崩していくかの判断基準になる。
35萬と46筒のどちらかを崩さなければならない時、46筒の方から切り崩す、ということを言っている。
東1局0本場南家 5巡目 +0 ドラ:西
自摸:
何を切るか?
面子は1つもなく、搭子は全部で6つある。四向聴である。4面子1雀頭を作るには、2つの搭子を切り崩さなくてはならない。搭子は6つとも嵌搭である。
ドラ西の対子は温存であろう。役としては123か234の三色同順、678か789の三色同順、または全帯幺を考える人もいるであろう。
しかし、この手から全帯幺を目指すのは牌効率が悪すぎる。全帯幺が好きな人の意識は、「全帯幺は断幺九の反対」というものであり、上の手を見て、「全帯幺に関係しない牌は2牌しかない」というものである。しかし、この認識は誤っている。全帯幺は数牌の面子においては111、123、789、999の4種類しか許していない。断幺九は、222〜888、234〜687の合計13種類の面子がある。そして、刻子よりも順子の方が圧倒的(統計データ挿入予定)に作りやすく、かつ、123と789の端寄順子よりも、234〜687の順子の方が圧倒的(統計データ挿入予定)に作りやすいのである。断幺九は全帯幺の12.32倍和がりやすい役なのである。私はこの手から全帯幺を決め打ちすることはない。
搭子は進化するのであり、全色において、4〜6の数牌を自摸っても無駄にならない。
三色同順を想起する人は多いと思われるが、この手はまた、三色同順を作るにも苦労する手である。13萬と24筒のようなズレた嵌搭の三色同順はそう簡単に完成しない。
私はこの四向聴の手が来たら立直以外の役は目指さない。嵌張形が残ることをメリットに変えて、立直+ドラ2の5200点を目指す。5200点は点数効率がいい点である。端寄りの嵌張待ちは決して愚形ではない。和了しやすい待ちである。
私の描く最終聴牌形はこんな感じである。
234萬678筒34579索西西
話を元に戻して、まあ、1萬か9筒か1索か9索切りあろう。
問題はここからで、これらのうち、どれを切るのが最も牌効率がいいか、である。
1萬か9筒か1索か9索のうちどれを切るのが最も有効かについて述べる。最も有効なのは1索か9索切り(対称形のためどちらでも同じ)である。なぜかというと崩された嵌搭のうちの残された牌と、他の牌との関係によるのである。1萬を切った場合、3萬が残り、3萬と68萬の6萬とは3つ差(筋持ち状態)である。筒子も同じである。しかし、索子だけは残された3索と79索の7索とは4つ差となる。4つ差は「二嵌の渡りを残す」という言葉で知られるように残すべき牌であるため、1索か9索切りを正解とする。
ここで言いたいことは、「6つある嵌搭のうちのいずれかの嵌搭を捨てる」と言うことではなくて、「6つある嵌搭のうちの1つの嵌搭を崩すが、嵌搭の1枚を切るのであり、もう1枚を浮き牌として温存する」ということなのである。そう考えた上で、残った浮き牌と他の牌との関連を考え合わせる必要がある。
辺搭の切り順
辺搭の切り順
一萬・二萬の辺搭を落とす場合、いついかなる場合でも、二萬→一萬の順で切っている人が多い。これは守備面では正しいことが多いが、牌効率上、誤りである。
牌効率上は、二萬の方が一萬より、牌単体エネルギーが高いので、一萬→二萬の切り順が原則としては正しいのであるが、牌効率と守備の両方を考え合わせて、どちらを先に切るかを決めるべきである。
基準は、同色牌の他の牌との差によるものである。
聴牌でも一向聴でもない二向聴の場合で考える。一向聴の場合には、ほぼ無条件に二萬から切ってよい。
・・・一萬から切る。
・・・二萬から切る。
・・・一萬から切る。
・・・二萬から切る。
・・・一萬から切る。
・・・二萬から切る。
上記で、一萬から切るか、二萬から切るかは、明確な基準で決まっている。四萬を含む搭子・面子があれば、一萬から切るのである。その理由は、筋持ちリスクもあるが、それよりも大きく、牌連続性が影響している。一萬を先に切り、二萬を残すと、延べ単になったり、振聴であるが多面待ちになる可能性を残す。
二嵌形
二嵌形
二嵌[りゃんかん]は3牌持ちで2種8牌待ちとなる牌の持ち方である。両嵌[りゃんかん]と書く場合もあるが、ここでは二嵌と書くこととする。
二嵌とは嵌搭が2つ連なった3枚構成の形のことで、135、246などの3枚で構成される形のことである。二嵌は全部で、5つのパターンがある。135、246、357、468、579の5パターンである。
連嵌[れんかん]形の話は別途するが、参考までに、嵌搭が3つ連なった形を三嵌と言う。三嵌は、1357、2468、3579の3パターンある。さらに四嵌は1パターンだけあり、13579となる。二嵌と三嵌と四嵌を合わせて、
連嵌
と言う。
連嵌
二嵌
5通り
135、246、357、468、579
三嵌
3通り
1357、2468、3579
四嵌
1通り
13579
嵌搭2つと二嵌を比較してみる。例えば、24と79という嵌搭2つと、357という二嵌1つを比べて考えるとする。この時、嵌搭2つよりも二嵌1つの方が有効である理由は、
(1)同じ2種4枚を待つのに、嵌搭2つは4枚使い、二嵌は3枚使いであるため。
(2)二嵌では1面子完成後も両搭+嵌搭としての捉えができるため。
(357から4を引くと3457となり、これは1面子+孤立の7と捉えられるが、同時に34の両搭と57の嵌搭として捉えられる。これに対して2479から3を引いて23479となっても新たな両搭は生まれない)
(3)牌結合エネルギーを生かせるため。(牌結合エネルギーの話は後述)
従って、単独の嵌搭よりも(当然辺搭よりも)、二嵌の方が有効であると言える。
しかし、二嵌は両搭には劣るのである。
34の両搭は25待ちとなり2種8牌である。246の二嵌は35待ちの同じく2種8牌である。同じ2種8牌であるが、二嵌より両搭の方が有効である理由は、
(1)両搭は有効牌により和了可能であるため。
(2)両搭は2枚使いであるのに二嵌は3枚使いであるため。
(3)二嵌以外が入り目となった場合、最終の待ちが嵌張となるため。
(麻雀の手作り役で最も多い平和を作るのに最終的に二嵌では困るため)
である。
通常、手作りにおいては、二嵌1つを1つの面子候補と見る。
搭子と二嵌と浮き牌の価値比較
単純に
両搭>二嵌>嵌搭>浮き牌>辺搭
と言える。
これをもう少し細かく価値の高い順に並べてみると、こうなる。
端寄両搭(23、78)>中間両搭(34、67)>中央両搭(45、56)>二嵌>準中央嵌搭(35、57)>中央嵌搭(46)>準端寄嵌搭(24、68)>4、5、6の浮き牌>端寄嵌搭(13、79)>3、7の浮き牌>辺搭>2、8の浮き牌>1、9の浮き牌>字牌の浮き牌
これらの価値比較に対子(字牌の対子、老頭牌の対子、22、88、33、77、44、55、66)を入れて論じることは、単純にはできない。対子の持ち方や落とし方については、別途考察する。ここでは順子を作る上においての対子以外の価値比較論とする。
辺搭と浮き牌の価値比較の判断を誤っている人は多い。辺搭よりも3〜7の浮き牌があれば、そちらを残して辺搭は崩してしまう方が、牌効率はいいのである。
二嵌の渡りの残すことの意味
二嵌の重要性が理解できている人は二嵌の渡りを残す技術を身につける。これは、1と5を持っている時に、「3が来れば二嵌形になる」従って、1は切りづらいと思うことである。
当然のことながら、3がドラの場合に、1と5を保持して二嵌の渡りを残すことになるのであるが、特に3がドラでなくとも、二嵌の渡りを残すという考えは重要である。
二嵌からの成長形
357の二嵌を持っている時に、4を引いて3457か、6を引いて3567か、のどちらかになって順子ができることを期待するのが一般的なのであろうが、そうならない場合も当然あり、その場合の対処方法についてしっかりと認識しておくべきである。
357から2がくっついて2357になったり、5がだぶって3557になったりするのである。
(1) 357から2がくっついて2357になった時
23の両搭と57の嵌搭、と捉えることができる。その上で他の搭子と比較して57の嵌搭を落とすかどうか決める。ただし、牌連続性を損なわないようにする注意が必要である。この時、もし5がドラでどうしても使いたい場合には、あえて両搭を嫌って、2を切り、二嵌形に戻すことも必要である。
(2) 357から5がだぶって3557になった時
35の嵌搭と57の嵌搭、と捉えることができる。もちろん、5の対子と、3と7の浮き牌と捉えることもできる。
自摸:
このように、他に2面子・1対子・1嵌搭がある場合、5萬を切って、二嵌形を維持するのがよい。
自摸:
このように、他に2面子・2嵌搭がある場合、3萬か7萬を切れば一向聴になる。5萬を切って二向聴を維持する打ち方もあるが、牌効率上は3萬か7萬を切る方がよい。
二嵌形の複合に関する考察
334557の形の時、一盃口の嵌張4待ちで、7が浮いているように見える。
この形の時に、二嵌の意識なく、7を切ってしまうのは、まずい打ち方である。
これは345の順子と357の二嵌の複合形である。一盃口という役を確定させたい気持ちにはやるばかりに二嵌形に気づかないのはまずい。あるいは、この形を345の順子と35の嵌搭としてしか捉えられないことはもっとまずい。6を引く確率は4を引く確率の1.33倍である。4を引く確率よりも6を引く確率の方が高いのである。門前でない場合には一盃口という役はないので、一盃口の形にこだわる必要は全くない。さらに一盃口形の嵌張待ちは、3355のダブルツーチャンスとなっているため、他家から早いうちに4が使えなくなって捨てられるケースが多い。一盃口 を意識しつつも「3と7は平等」という意識が必要である。
233457の形、これも7が浮いているように見える。23の両搭と345の順子と見ることが普通であり、7が捨てられる場合が多いであろう。ここで7を捨てるべきではないとは言わない。先ほどの例とは異なり、3と7は平等ではない。3を切ると234の順子と57の嵌搭になり、両搭より不利になるからである。しかし、この形は、234の順子と357の二嵌複合形であると見ることもできる。つまり7を切る時には6を引いた場合のデメリットを考えておかなければならないということである。また、当然357の二嵌であることを意識しながら7を切るべき優先度を決めなければならない。二嵌の意識がないと、6を引いて振聴になってしまう。
牌連続性の見地からの二嵌形
二嵌は、面子を1つ作るためだけのもの、と捉えていてはいけない。
357の二嵌形から、4を引いて7を切る、6を引いて3を切る、とだけ考えていてはいけないということである。3457の形において、7は単なる浮き牌ではない。34の両搭と57の嵌搭という捉えができるのである。つまり、この3457以外の搭子との比較の上、捨て牌選択をしなければならない。
ある一色、萬子という色において、二嵌形だけを持っているという状態ばかりではない。同色の他の搭子・対子・面子などが複雑に絡み合う。どのような形で牌姿を捉えられるかが、牌効率に大きな影響を与えることとなる。
一般に牌連続性が重要視される。3457から6を引けば、34567となり3面待ちになるからである。
二嵌形と面子の牌連続性
一般に面子は面子として捉え、搭子は搭子、浮き牌は浮き牌と、それぞれの要素ごとにばらして考えることが多い。アプローチとして、この要素ごとに分割して考えることはいいのであるが、横の連続性を充分に考慮しなければならない。
246789の場合、246の二嵌と789の順子、と捉えられるが、連続しているために構造が複雑である。24の嵌搭と67の両搭と89の辺搭、という3つの搭子と捉えることもできるし、24の嵌搭と678の面子と9の浮き牌と捉えることもできる。246の二嵌に着目した場合、一般に、牌連続性のある6の方が2よりも牌単体エネルギーは強い、と言える。つまり、将来面子構成への寄与率が高いのである。
搭子比較論
辺搭の比較
12の辺搭が2つあり、どちらかを落とす場合、どちらを落とすか?
これが辺搭比較の理論である。
「1萬2萬の辺搭と、1筒2筒の辺搭、のどちらを落とすか?」について、どちらでも同じ、と考えては行けない。
自摸:
この例の場合、一萬二萬の辺搭を切り崩す方がよい。なぜならば、辺搭から嵌搭への進化確率が、萬子より筒子の方が高いからである。萬子は、四萬を引いた時にしか嵌搭に進化し得ない。それに対して、筒子は、 四筒か七筒を引いた時に辺搭が嵌搭に進化し得るのである。
と、長らく書いていたが、この理論は誤りであることが最近の研究で明らかになった。
この牌姿においては、一筒を切るのが正解である。一筒を切ると、一二萬の辺搭と、二四筒の嵌搭と、五六筒の両搭の3つの搭子ができることになる。一萬を切ってしまうと、二萬が単独孤立牌になり、牌構成に寄与しない牌を生むことになる。一筒切りは、牌構成に寄与しない牌を生まない絶妙な切り方なのである。
かぶり搭子
五索を自摸って、二向聴から一向聴になった。3つある両搭のうち、どれ落とすか?
自摸:
雀頭を固定しないために五索を自摸切りするというのは、この一向聴形になってからでは、牌効率の悪い打ち方である。
3つある両搭のうち、二三筒と五六筒の両搭は、「
かぶり搭子
」と言う。搭子の待ちが、一四筒と四七筒であり、四筒が
かぶる
からである。
このようなかぶっている搭子がある場合には、かぶり搭子を嫌うのが定石の打ち方である。
実践的な搭子比較
より実践的な搭子比較は、
2−04牌効率理論
にておいて、具体的・定量的に示す。
沼崎定石(完全一向聴形)
ポンよしチーよしポンチーよし
牌価値論(N式数学法)でも有名な沼崎雀歩氏が命名した搭子理論の有名な定石が
沼崎定石
、別名
完全一向聴形
である。「ポンよしチーよしポンチーよし」と言われる。
沼崎定石
とは、2面子+1対子+1搭子+対子と搭子の複合形 のことである。
沼崎定石
は、手牌7牌で最も効率のよい一向聴形である。2面子確定後は、
沼崎定石
の形にするように打つことが肝要である。
2面子を除くと、
二萬が対子、二筒・三筒が搭子、四索・五索・五索が対子と搭子の複合形になっている。
対子でポン可能、搭子でチー可能、対子と搭子の複合形でポンとチーが可能であることから、「ポンよしチーよしポンチーよし」と呼ばれるのである。ポンよし、チーよしとは、「鳴けばよい」ということではなく、ポン可能・チー可能ということであり、対子形・搭子形のことを表現しているだけである。
この牌姿から1牌の有効牌を引いて聴牌することを考えると、四索か五索が切られることになる。
(1)四索が切られるケース
二萬または五索を引いた場合であり、2種4牌である。
(2)五索が切られるケース
一四筒または三六索を引いた場合であり、4種16牌である。
五索が切られるケースの方が、四索が切られるケースより4倍も高いことになる。
ここに絶対安牌である西を引いて、五索を切ることを先切りという。先切りすることのメリットは、
@両面待ちを確定する、(この牌姿の場合は違うが)さらに平和を確定する。
A絶対安牌である西を保持することにより、守備を固める。
B一四筒を引く確率と三六索を引く確率は同じで、三六索を引く場合には問題ないが、一四筒を引く場合には、聴牌時に五索を切って立直などとすると、そば聴がバレて、三六索が出にくくなる。
などがある。
牌効率上は、副露を考えても
沼崎定石
の形にすべきであるが、守備を重視したい場面、例えば、オーラスでダントツの親だったならば、何も無理して和了を目指すべきではなく、腰を引いた打ち方をすればよい。
自摸:
対子+対子+対子と搭子の複合形に、五筒を自摸って来た。
沼崎定石
の形にするには、三筒か五索を切る。この場合には両面確定性が高い五索を切る方が牌効率はよい。
自摸:
搭子+搭子+対子と搭子の複合形に、二筒を自摸って来た。
沼崎定石
の形にするには、四筒か四索を切る。この場合には嵌張を嫌う四筒を切る方が牌効率はよい。
自摸:
辺搭においても同じ理論が適用される。二筒か四索かを切るのであるが、四索を切ると両面がなくなるので、辺張を嫌う二筒を切る方が牌効率はよい。ここで五索切りは
沼崎定石
の形にならない牌効率の悪い打ち方である。
3牌の形の分類
3牌を形によって分類してみる。2つ以上離れていない牌を対象とし、すべてのパターンを抽出する。
搭子とその他1牌の複合形は、対子とその他1牌の複合形になることもあるが、搭子を優先して見る。
まずは老頭牌「1」を含む場合である。
牌姿
面子
搭子
対子
一般名称
面子化有効牌数
111
暗刻
対子+浮き牌
暗刻
0
112
辺搭+浮き牌
対子+浮き牌
辺対子
2+4=6
113
嵌搭+浮き牌
対子+浮き牌
嵌対子
2+4=6
122
辺搭+浮き牌
対子+浮き牌
辺対子
2+4=6
123
暗順
辺搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
両搭+浮き牌
暗順
0
124
辺搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
辺嵌搭
4
133
嵌搭+浮き牌
対子+浮き牌
嵌対子
4+2=6
134
嵌搭+浮き牌
両搭+浮き牌
嵌両搭
4+4=8
135
嵌搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
二嵌
4+4=8
次に老頭牌「1」を含まないものを全パターン洗い出す。
牌姿
面子
搭子
対子
一般名称
面子化有効牌数
222
暗刻
対子+浮き牌
暗刻
0
223
両搭+浮き牌
対子+浮き牌
両対子
4+2+4=10
224
嵌搭+浮き牌
対子+浮き牌
嵌対子
2+4=6
233
両搭+浮き牌
対子+浮き牌
両対子
4+2+4=10
234
暗順
両搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
両搭+浮き牌
暗順
0
235
両搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
嵌両搭
4+4=8
244
嵌搭+浮き牌
対子+浮き牌
嵌対子
4+2=6
245
嵌搭+浮き牌
両搭+浮き牌
嵌両搭
4+4=8
246
嵌搭+浮き牌
嵌搭+浮き牌
二嵌
4+4=8
3牌の形を比較した時に、暗順は多角度から搭子見なしができる優れた牌姿であると言うことができる。すべての暗順は必ず3通りの搭子+浮き牌と見なすことができる。
4牌の形の分類
4牌を形によって分類してみる。2つ以上離れていない牌を対象とし、すべてのパターンを抽出する。
面子とその他1牌の複合形は、面子を優先して見る。
まずは老頭牌「1」を含む場合である。
牌姿
面子
搭子
対子
一般名称
1111
暗刻+浮き牌
対子+対子
未槓子
1112
暗刻+浮き牌
辺搭
対子
暗刻そばくっつき
1113
暗刻+浮き牌
嵌搭
対子
暗刻離れくっつき
1122
辺搭+辺搭
対子+対子
かぶり辺搭・並び対子
1123
暗順+浮き牌
辺搭
嵌搭
両搭
対子
両面単騎
1124
辺搭
嵌搭
対子
1133
嵌搭+嵌搭
対子+対子
かぶり嵌搭・飛び対子
1134
嵌搭
両搭
対子
1135
嵌搭
嵌搭
対子
端膨れ二嵌
1222
暗刻+浮き牌
辺搭
対子
暗刻そばくっつき
1223
暗順+浮き牌
辺搭+両搭
嵌搭
対子
中膨れ面子
1224
辺搭+嵌搭
対子
1233
暗順+浮き牌
辺搭
両搭
対子
端膨れ面子
1234
暗順+浮き牌
辺搭+両搭
嵌搭+嵌搭
両搭
延べ単
1235
暗順+浮き牌
辺搭+嵌搭
両搭
嵌搭
1244
辺搭
嵌搭
対子
1245
辺搭+両搭
嵌搭
1246
辺搭+嵌搭
嵌搭
1333
暗刻+浮き牌
嵌搭
対子
暗刻離れくっつき
1334
嵌搭+両搭
対子
1335
嵌搭+嵌搭
対子
中膨れ二嵌
1344
嵌搭
両搭
対子
1345
暗順+浮き牌
嵌搭+両搭
両搭
嵌搭
1346
嵌搭+嵌搭
両搭
1355
嵌搭
嵌搭
対子
端膨れ二嵌
1356
嵌搭+両搭
嵌搭
1357
嵌搭+嵌搭
嵌搭
三嵌
次に老頭牌「1」を含まないものを全パターン洗い出す。
牌姿
面子
搭子
対子
一般名称
2222
暗刻+浮き牌
対子+対子
未槓子
2223
暗刻+浮き牌
両搭
対子
暗刻そばくっつき
2224
暗刻+浮き牌
嵌搭
対子
暗刻離れくっつき
2233
両搭+両搭
対子+対子
かぶり両搭・並び対子
2234
暗順+浮き牌
両搭
嵌搭
両搭
対子
両面単騎
2235
両搭
嵌搭
対子
2244
嵌搭+嵌搭
対子+対子
かぶり嵌搭・飛び対子
2245
嵌搭
両搭
対子
2246
嵌搭
嵌搭
対子
端膨れ二嵌
2333
暗刻+浮き牌
両搭
対子
暗刻そばくっつき
2334
暗順+浮き牌
両搭+両搭
嵌搭
対子
中膨れ面子
2335
両搭+嵌搭
対子
2344
暗順+浮き牌
両搭
両搭
対子
両面単騎
2345
暗順+浮き牌
両搭+両搭
嵌搭+嵌搭
両搭
延べ単
2346
暗順+浮き牌
両搭+嵌搭
両搭
嵌搭
2355
両搭
嵌搭
対子
2356
両搭+両搭
嵌搭
かぶり両搭
2357
両搭+嵌搭
嵌搭
2444
暗刻+浮き牌
嵌搭
対子
暗刻離れくっつき
2445
嵌搭+両搭
対子
2446
嵌搭+嵌搭
対子
中膨れ二嵌
2455
嵌搭
両搭
対子
2456
暗順+浮き牌
嵌搭+両搭
両搭
嵌搭
2457
嵌搭+嵌搭
両搭
2466
嵌搭
嵌搭
対子
端膨れ二嵌
2467
嵌搭+両搭
嵌搭
2468
嵌搭+嵌搭
嵌搭
三嵌
振聴リスク
搭子を切り崩す際には、必ず振聴[ふりてん]リスクを負うことになる。
振聴状態で、栄和するとチョンボというペナルティが科せられる。
東1局0本場南家 5巡目 +0 ドラ:西
自摸:
ここから一索を切ったら、裏目の二索を引いてしまったとする。
自摸:
一索を切ってしまっているので、振聴となる可能性が生じる。だから、二索と三索を切るべきであろうか?
何が何でも振聴を嫌う必要はない。このように向聴数が高く、かつ、他に嵌搭ばかりのような牌姿においては、振聴リスクがあろうとも、貴重な両搭を保持すべきである。
振聴は下手打ちの証左ではない。どんなうまい人でも、搭子を崩す時には振聴リスクを負うのである。聴牌時に振聴になることは恥ずかしいことではない。自摸和なら和がれるのは麻雀の正当なルールである。
より向聴数が進んでいる場合においても、搭子価値が高いなら、主に両面、場合によっては3面待ちなどの場合には、振聴リスクを恐れず、聴牌に近い方を目指すべきである。まず第一に聴牌後にしか、「振聴」という言葉は適用されない。聴牌する前に自摸れば良い。そして、聴牌後においても、栄和しなければ問題はない。
現代麻雀はスピード麻雀と言われ、早く聴牌して立直をかけることが勝敗の分かれ目になる。「ダマで討ち取ろう」ではなく、早く聴牌して早く立直の方が有効な戦略である。早く聴牌して早く立直をかける上において、実は振聴は関係ない。振聴立直したとしても、栄和で和がらず、自摸センにすればよいのである。立直がかかれば他家の手は止まる。
ひいいの麻雀研究ホーム
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