壁に関する各種理論。
壁の一般論
一般に、筋と壁、この2つをもって待ち読み、としているようである。他にも多くの待ち読みの技法は存在するが、筋と壁の2つが、待ち読みの基本であると言える。
多くの待ち読みの技法を集約した言葉が、筋と壁であると言える。
壁とは、牌構成読みの一部の形態である。
中張牌のある1種類の牌が4枚見えていたら、完全壁と言う。3枚見えていたら3枚壁と言う。
「見えている牌」とは、全員の捨て牌・副露牌・ドラ表示牌・自分の手牌のすべてである。
字牌や老頭牌(1と9)が4枚見えていても壁とは言わない。壁になりうるのは、中張牌だけである。
これは、数牌を2つの領域に分断するものであるという字義から来ているものと思われる。
八萬が4枚見えていたら、両面六九萬待ちはあり得ない。ただし、九萬単騎待ちや九萬双ポン待ちはありうる。これを両面ノーチャンスと言い、「八萬は完全壁」と言う。
八萬が3枚見えていたら、両面六九萬待ちはありうるのだが、その可能性は薄い。これを両面ワンチャンスと言い、「八萬は3枚壁」と言う。
壁の外寄り(老頭牌寄り)の牌のことを壁外(かべそと)と言う。その反対に、壁の中寄りの牌のことを壁内(かべうち)と言う。
壁の外を安全性が高いと思って切ることを「壁を頼る」と言う。
壁 | 壁外 |
| なし |
|
|
|
と |
|
とと |
| なし(壁外と言えない) |
|
とと |
|
と |
|
|
| なし |
四萬が4枚見えている時に、四萬を跨ぐ面子は構成できない。つまり両面の二五萬待ち、三六萬待ちはあり得ないのである。萬子で両面待ちは、五八萬待ち、六九萬待ち、だけになる・・・わけではない。一四萬待ちと四七萬待ちは、片枯れ両面待ちとして残るのである。
一般に、3枚以上見えている牌を壁と言うが、ここでは2枚見えている場合も同類の読みとして扱うこととする。
壁のでき方
壁のでき方には、3通りある。
(1)ポン・槓に因る壁
他家の中張牌の明刻(ポン)は瞬時にできる3枚壁である。自家の明刻(ポン)は自分にとって瞬時にできる3枚壁ではない。
他家の中張牌の暗槓と大明槓は、瞬時にできる完全壁である。自家が暗槓と大明槓をする時には自分にとって瞬時にできる完全壁ではない。
他家の加槓は、3枚壁が完全壁に変わる時である。
他家のポンや槓は自分にとって大変有益な情報である。何度も書いていることだが、序盤に中張牌をポンすることや、およそいかなる場況でも槓することは、愚かな行為である。
(2)捨て牌・チーに因る壁
捨て牌や、ポンではなくチーによって徐々に見えてきてできる壁である。
(3)自分の手持ち牌と合わせた壁
捨て牌や副露牌などでは壁になっていないが、自分の手持ち牌と合わせると壁になっているものである。手持ちで暗刻や未槓子を持っている場合はもちろん、対子を持っている場合にも起こりやすい。
絶対安牌
麻雀の待ち読みには「絶対」というものが少ない。
「絶対にあたる牌」と言うことはできない(オープン立直を除く)。「絶対にあたらない牌」は、現物とこの絶対安牌である。
安牌(あんぱい)という言葉は、「完全ではないがかなり安全である」という牌も含んで用いられることが多いため、ここでは100%絶対に和了牌になり得ない牌のことを絶対安牌と呼ぶこととする。
絶対安牌とは、ある特定他家に絶対に当たらない牌のことである。他家3人全員に当たらない牌のことは共通安牌(国際共通安全牌)などと言う。
八萬が4枚、九萬が3枚見えている状態では、九萬は絶対安牌である。本当か? 間違っている。国士無双の可能性があるからだ。
東が3枚、任意の幺九牌が4枚見えている状態では、東は絶対安牌である。
八萬が4枚、九萬が3枚、任意の幺九牌が4枚見えている状態では、九萬は絶対安牌である。
七萬が4枚、九萬が3枚、任意の幺九牌が4枚見えている状態では、九萬は絶対安牌である。
七萬が4枚、八萬が3枚見えている状態では、八萬は絶対安牌である。
四萬が4枚、五萬が3枚、六萬が4枚が見えている状態では、五萬は絶対安牌である。
四萬が4枚、五萬が3枚、七萬が4枚が見えている状態では、五萬は絶対安牌である。
ここで示したすべてが、完全壁によって成り立っている。「筋と壁」と一般に言われるが、筋(正確には表筋)には絶対性はない。完全壁が絡んだ場合において、絶対安牌が生まれる。
ノーチャンス
ここでは上述の絶対安牌とノーチャンスを別の概念として捉える。待ちの形態によっては絶対安牌になるケースのことをノーチャンスと呼ぶ。
ノーチャンスにはいくつかの種類があるが、特に両面ノーチャンスのことを単にノーチャンスと呼ぶことが多い。両面ノーチャンスは後述のワンチャンスとともに、壁という概念で語られる。
勘違いしないで頂きたいのは、「八萬が4枚見えている状態」の時に「八萬待ちはありうる」のである。つまり六萬と七萬を持っていて五八萬待ちはありうる。八萬は理論上の当たり牌になる。
・両面ノーチャンス
八萬が4枚見えている状態では、九萬は両面ノーチャンスである。
七萬が4枚見えている状態では、九萬は両面ノーチャンスであるし、八萬も両面ノーチャンスである。
四萬が4枚、六萬が4枚見えている状態では、二萬・三萬・五萬・七萬・八萬は両面ノーチャンスである。
四萬が4枚、七萬が4枚見えている状態では、二萬・三萬・五萬・六萬・八萬・九萬は両面ノーチャンスである。
・辺張ノーチャンス
九萬が4枚見えている状態では、七萬は辺張ノーチャンスである。
八萬が4枚見えている状態では、七萬は辺張ノーチャンスである。
・嵌張ノーチャンス
四萬が4枚見えている状態では、五萬は嵌張ノーチャンスである。
六萬が4枚見えている状態では、五萬は嵌張ノーチャンスである。
・双ポンノーチャンス
ある牌が3枚見えている状態では、その牌は双ポンノーチャンスである。
・単騎ノーチャンス
ある牌が4枚見えている状態では、その牌は単騎ノーチャンスである。
役ノーチャンス
通常ノーチャンスは、待ち形態によって言われ、その中でも一般には両面のノーチャンスにおいて言われる。
この待ち形態のノーチャンスとは別に、役においてもノーチャンスはあり、それを役ノーチャンスと呼ぶ。
・国士無双ノーチャンス
1種の幺九牌が4枚見えている状態では、国士無双ノーチャンスである。
・役ノーチャンス
以下の役ノーチャンスはあり得る。
全帯幺ノーチャンス
純全帯幺ノーチャンス
字一色ノーチャンス
清老頭ノーチャンス
緑一色ノーチャンス
九蓮宝燈ノーチャンス
四槓子ノーチャンス
役ノーチャンスがない役(正確には役ノーチャンスを読む価値がない役)は、以下の通りである。
平和ノーチャンス
断幺九ノーチャンス
七対子ノーチャンス
一盃口ノーチャンス
二盃口ノーチャンス
ワンチャンス
ノーチャンスが100%なのに対して、見えている牌が4枚であるべきところ1枚見えず、その1枚を持っていられたら、放銃可能性があることをワンチャンスという。
ワンチャンスはパターンが多いので、そのすべてを挙げることはしない。
このようなケースで使われることが最も多い。八萬が3枚見えている状態では、九萬は両面ワンチャンスである。
┌─────────┐
│ │
│ □ │
│ □ │
│ □ │
└─────────┘
一二三四五六七八九
萬萬萬萬萬萬萬萬萬 |
八萬が3枚見えている時、九萬は両面ワンチャンスであるが、単騎待ちも双ポン待ちもありうる。同じワンチャンスであっても、九萬が見えている枚数が多いほど、九萬での放銃リスクは下がることになる。
ツーチャンス
ツーチャンスという言葉はあまり使用されないが、ノーチャンス、ワンチャンスがあれば、ツーチャンス、スリーチャンス、オールチャンスという言葉もあってしかるべきである。
・ノーチャンス … 八萬が4枚見えている状態。
・ワンチャンス … 八萬が3枚見えている状態。
・ツーチャンス … 八萬が2枚見えている状態。
・スリーチャンス … 八萬が1枚見えている状態。
・オールチャンス … 八萬が0枚見えている状態。
なぜツーチャンスという言葉が利用されないのかというと、そのような読みの考え方がなされていないからである。3枚見えていれば壁としての価値があるが、2枚では壁となり得ないと思われるからである。
しかし、1枚も見えていないオールチャンスの状態と、1枚見えているスリーチャンスの状態とでは危険度が異なるのは明白である。
ツーチャンスにおいても、八萬が2枚見えている状態での九萬の危険度と、八索が0枚見えている状態での九索の危険度に差異があることは明白である。
雀士の多くは、「可能性が高い」「可能性が低い」の二極で考えがちであるが、どの程度の可能性があるのかを定量把握する必要がある。
ツーチャンスでも組合せがあると、危険度の読み方も随分と違ってくる。八萬が2枚、七萬が2枚見えている状態、ダブルツーチャンス状態では、九萬の危険度はぐっと減る。どれくらい減るのか、分析してみる。
┌─────────┐
│ │
│ │
│ □□ │
│ □□ │
└─────────┘
一二三四五六七八九
萬萬萬萬萬萬萬萬萬 |
壁による危険度の定量比較
何枚壁かによって危険度は異なるが、その危険度の定量比較をしているものは皆無である。
ここでは、壁による危険度の定量比較を行う。
9巡目にある他家が聴牌したとする。
この時、この他家の当たり牌が六九萬の両面待ちである確率を数学的に求めて定量比較する。
副露はないものとし、また、九萬の単騎待ちと双ポン待ちはないものとする。
34種類136牌のうち、両面待ちであるためには、七萬と八萬を持っている。見えている牌は、河すべてで9×4=36牌、自家手持ち牌14牌、ドラ表示牌1牌。合計51牌。見えていない牌(他家手牌か山残牌)は、136−51=85牌。
七萬も八萬も1牌も見えていない場況では、ある特定他家に七萬がある確率は、13÷85×4=61.18%となり、八萬も同じで、七萬と八萬を両方持っている確率は、37.43%となる。これは、九萬を打牌すれば、37.43%の高確率で放銃するという数値ではなく、七萬と八萬を最低1枚ずつ持っている確率であり、放銃確率ではない。聴牌していない場合もあるし、七萬か八萬がダブっている場合もあるし、待ちが両面にならない場合もあるのだが、定量比較のため、この計算方法を基準とする。
ここでは、「九萬を切った時に何パーセントの確率で放銃するのか?」がテーマではなく、壁、つまり見えている同種牌の数による定量比較なので、何枚見えていれば何倍安全なのか、に着目する。
見えている牌 |
が特定他家にある確率 |
が特定他家にある確率 |
両面待ちの確率 |
(なし) | 61.18% | 61.18% | 37.43% |
| 61.18% | 45.88% | 28.07% |
| 61.18% | 30.59% | 18.71% |
| 61.18% | 15.29% | 9.36% |
| 61.18% | 0.00% | 0.00% |
定量比較をすると判ることは、何倍危ないか、ということである。
4枚見え、つまり、ノーチャンスの場合は、可能性ゼロである。
2枚見えのツーチャンスは、3枚見えのワンチャンスより、2倍危険である。
1枚見えのスリーチャンスは、2枚見えのツーチャンスより、1.5倍危険である。
0枚見えのオールチャンスは、1枚見えのスリーチャンスより、1.33倍危険である。
見えている牌数が多ければ多いほど、安全であるのは当然であるが、0枚より1枚、1枚より2枚、2枚より3枚、3枚より4枚の方が、比例ではなく、より等比級数的に安全になっていく。
また、ここで言えることは、0枚見えと1枚見えの差異の大きさである。一般に壁を論じる時に、「3枚以上見えていて壁」と認識している人は多く、1枚見えを壁とは呼ばないのであるが、危険度の定量比較をする上において、たった1枚であっても見えているか否かで危険度は1.33倍も変わるのである。
ドラ:
9巡目、自摸状態でこのような牌姿、同巡他家が立直をかけていたとする。安牌は特にない。萬子の上の方と筒子の上の方は誰の河にも見えていないとしたら、九萬を切るのと、九筒を切るのと、どちらがどれくらい危険か? このような場合に、明示的に「八萬が1牌見えている(自分が持っている)ので、九萬の方が九筒より1.33倍安全である」と認識することが大切である。
次に2種類の牌、七萬と八萬の見えている牌数の違いによる危険度定量比較を行う。
見えている牌 |
が特定他家にある確率 |
が特定他家にある確率 |
両面待ちの確率 |
(なし) | 61.18% | 61.18% | 37.43% |
| 61.18% | 45.88% | 28.07% |
| 45.88% | 61.18% | 28.07% |
| 45.88% | 45.88% | 21.05% |
| 61.18% | 30.59% | 18.71% |
| 30.59% | 61.18% | 18.71% |
| 45.88% | 30.59% | 14.03% |
| 30.59% | 45.88% | 14.03% |
| 61.18% | 15.29% | 9.36% |
| 30.59% | 30.59% | 9.36% |
| 15.29% | 61.18% | 9.36% |
| 45.88% | 15.29% | 7.02% |
| 15.29% | 45.88% | 7.02% |
| 30.59% | 15.29% | 4.68% |
| 15.29% | 30.59% | 4.68% |
| 15.29% | 15.29% | 2.34% |
| 61.18% | 0.00% | 0.00% |
| 45.88% | 0.00% | 0.00% |
| 30.59% | 0.00% | 0.00% |
| 15.29% | 0.00% | 0.00% |
| 0.00% | 61.18% | 0.00% |
| 0.00% | 45.88% | 0.00% |
| 0.00% | 30.59% | 0.00% |
| 0.00% | 15.29% | 0.00% |
| 0.00% | 0.00% | 0.00% |
七萬と八萬の見えている牌数が多ければ多いほど安全であることは、自明であるが、同じ牌数でも危険度に違いがあるところに着目したい。
見えている牌が1牌の場合に、計算結果に差異はない。
見えている牌が2牌の場合は、七萬・八萬が1牌ずつの場合と、七萬2牌か八萬2牌かの場合に分けられる。
見えている牌 |
両面待ちの確率 |
| 21.05% |
または | 18.71% |
計算結果を見ると、同種牌が2牌見えている方が、壁としての価値が約1.125倍高いことになる。
見えている牌が3牌の場合は、七萬・八萬が1牌+2牌の場合と、同種牌3牌の場合に分けられる。
見えている牌 |
両面待ちの確率 |
または | 14.03% |
または | 9.36% |
計算結果を見ると、同種牌が3牌見えている方が、壁としての価値が約1.5倍高いことになる。
見えている牌が4牌の場合は、七萬・八萬が1牌+3牌の場合と、2牌+2牌の場合に分けられる。0牌+4牌の場合もあるが、これはノーチャンスになるので比較対象から外す。
見えている牌 |
両面待ちの確率 |
または | 7.02% |
| 9.36% |
計算結果を見ると、七萬・八萬が1牌+3牌の場合の方が、壁としての価値が約1.33倍高いことになる。
これらの結果を比較すると、見えている牌が同じ牌数であるならば、同種牌が見えている数が多い方が安全である(壁としての価値が高い)ことが判る。
なお、興味深いことに、同種牌3牌見えの場合と、七萬・八萬が2牌+2牌の場合の危険度がちょうど同じ9.36%である。
見えている牌 |
両面待ちの確率 |
または | 9.36% |
| 9.36% |
見えている牌数は異なるが、危険度は同じなのである。
ドラ:
9巡目、自摸状態でこのような牌姿、同巡他家が立直をかけていたとする。安牌は特にない。萬子の上の方と筒子の上の方は誰の河にも見えていないとしたら、九萬を切るのと、九筒を切るのと、どちらがどれくらい危険か? この場合に、七萬と八萬が2牌ずつ見えている(自分が持っている)ことと、八筒を暗刻で持っていることから、九萬と九筒の危険度に、変わりはない。他に待ち読みの要素があればそれを利用するが、そうでなければ、危険度は同じと割り切って、自分の手の都合に合わせて九筒を切るのがよい。
総枯れ状態の時の読み
同種牌が4枚見えていることを総枯れ状態と言う。
八萬が総枯れ(八萬が4枚見えている)状態だとしたら、七萬は端牌と同じ状態になる、67萬持ちの58萬待ち両搭は、五萬待ちの辺搭と同じ価値になる。このことは理論的に理解しておいて、実戦では、789の7と同じように
5が扱われるかというと、
必ずしもそうはならない。それは八萬の見え方によるのである。初巡に八萬が槓されたとすると、七萬は端牌とほぼ同じ状態になるが、捨て牌や副露牌の中に、チラチラと八萬が出てきて、最終的に八萬が見えている状態や、4枚の八萬のうちの何枚かを自分の手のうちに持っている状態では、七萬が端牌扱いになる可能性は低い。
ど真ん中の五萬が総枯れだと、待ち読みの材料は多くなる。筋は全部で18あるが、そのうち、三六萬・四七萬の2つが完全にないことになり、萬子では、両面片肺の二五萬・五八萬と、一四萬・六九萬が残ることになる。筋待ちで最も多いのは、三六と四七であり、この2つがないことは、萬子が相対的に筒子や索子に比べて安全になる。五萬が総枯れでは、三萬と七萬の安全性が高い。次が二萬と八萬となる。
四萬が4枚見えで完全壁の時、一四萬待ちは充分にあり得る。
四萬が4枚見えてしまった時に、ましてやインパクトのある槓などで4枚が見えてしまった時、普通はなくなった牌の待ちは嫌うものである。三萬・五萬と嵌搭を持っていたとしたら、これは当然面子として成り立たなくなるので整理に入るのであるが、二萬・三萬と両搭を持っている時に、壁を意識して壁の裏を突く技がある。この両搭では一四萬待ちの四萬枯れであるが、一萬は4枚残っているのである。これは単騎待ちより効率がいい。一萬単騎待ちは待ち牌数3枚であるが、片枯れの一四萬待ちは待ち牌数4枚なのである。よって、四萬が4枚見えの場合に、一萬よりも、両面待ちを構成できない二萬と三萬の安全度の方が高い。
筋と壁の複合
七萬が壁になっている時に、壁外だけに着目して、八萬と九萬は比較的安全と読むのが壁読みの一般論である。
しかし、これを筋と複合させると、より安牌は増えてくる。
他家の捨て牌に三萬があっても、六萬は表筋にはならない。六萬のような要頂牌が切られていれば、三萬は表筋になるが、三萬には表筋はない。しかし、七萬が壁になっていた場合に、「壁跨ぎの六九萬待ちは薄い」という壁読みと、「三萬が現物なので三六萬待ちはない」という筋読みを合わせて、「六萬は薄い」と読むことができるのである。
このような読み方のことを、筋と壁の複合読みと言う。
特定他家の河
ドラ:
自分の手持ち牌
ドラ:
このような場合には、現物はなく、筋と壁の複合読みで比較的安全と読める六萬を切る。
壁理論の応用
●筋と壁の危険度比較
「筋と壁のどちらを信用すればいいのか」との質問を受けたことがある。筋と壁の危険度定量比較は、今後の研究テーマとするが、感覚的には壁を頼る、特に自分の手持ち牌で構成できる壁を頼る方が安全であると思う。
●自分だけが見えている壁
自分だけが見えている壁の情報価値は高い。暗刻筋は他家牌構成読みに関わることであるが、自分の手牌に中張牌の暗刻があることは、自分だけが知り得る壁であり、自分だけが壁読み可能な貴重な材料なのである。
●暗刻筋
暗刻筋とは、自分の手牌の中に暗刻で持っている牌の筋は危険である、という待ち読みの理論である。
このこと自体は他家牌構成読みに関わることであり、自分が筋で多くの牌を持っていれば、それが和了牌である可能性が高まることに因るのである。
●壁引っかけ
一般に引っかけと言えば、「筋引っかけ」のことであり、表筋を吊り出すことである。
「壁引っかけ」とは、わざと壁外で待つことによって、他家からの出和がりを期待することである。
●攻めの壁と守りの壁
わざと壁を作ることによって、安牌の吊り出しを行う戦法がある。晒す必要はないのにわざとポンや槓などをして、壁外の牌を吊り出す方法である。
その逆に、壁を見せないことによって、壁を自分だけの情報とし、他家を苦しめる方法もある。
前者は自分が積極的に動いたことによる効果を確認しやすいのに対して、後者は消極的方法であり効果を確認しづらいものである。このことから、前者の戦術を好んで採択する人も多いが、後者の情報をなるべく隠蔽する方が有効である場面が多いと思う。
●壁情報は守りの情報のみならず
壁は、危険度を読むためだけにあるのではなく、自分の手の進行、牌効率、壁引っかけに利用する。
●壁の裏筋
「壁の裏筋は危険」と発言した人がいた。
八萬が3枚見えたら、特定他家が八萬を切っておらずとも、八萬の裏筋の四七萬待ちが危険であるというものである。鋭意研究したいと考えているが、現在のところ、「壁の裏筋は危険」と言えるような論理は成り立たない。
九萬の上に十萬という牌があったと仮定すると、常に十萬は完全壁であり、その裏筋の六九萬が危ないという理論になる。しかし、端寄りの牌の方が危険度は低いのであり、壁ができたとしても、その壁の牌の裏筋が危ないということは言えないのではないかと思う。
●壁外への放銃
壁の外の薄いところに放銃したからといってくよくよしないこと。絶対無放銃はあり得ない。
危険度を正しく認識し、定量比較を行うことが大切なのである。
|
|